広告・プロモーション支援
サンプル事例3
新たな顧客獲得を実現する広告イラストレーションのご支援
クライアント:大手鉄道会社
対象サービス:乗り放題きっぷ【青春きっぷ】
担当 :クリエイティブアイデアの創出~
クリエイティブの制作
※本事例はサンプルです。
実在の企業・団体・サービスとは関係ありません。

—背景—
クライアントは大手鉄道会社です。
春、夏、冬の学生の長期休暇に合わせて発行している【青春きっぷ】のポスターイラストレーション制作のご相談をいただきました。
1万円で5日間分乗り放題になるきっぷで、旅行好きな人からは好評を博しているサービスです。
乗り放題という特性を活かして、目的地に真っすぐ向かう使い方ではなく、
ふと気になる駅で電車を降りてみたり、あてもなく電車を乗り継ぐ旅をしたりなど、幅広い楽しみ方で利用されています。
これまでは、美しい駅や電車の写真と、繊細なコピーによって構成されたシンプルなデザインの広告を展開していました。
今回はそれらの要素を引き継ぎつつ、売り上げをさらに上げるため、新しいビジュアルを検討したいとのことで、
クリエイティブアイデアの創出からご支援しました。
—クリエイティブアイデアの創出—

青春きっぷは40年ほど販売され、愛され続けている人気なサービスです。
もともとはお金がない学生にも旅を楽しんでほしいと考案されたきっぷで、長期休暇のタイミングにあわせて発売をされています。
現在は学生に限らず、多くの旅行ファンが発売のたびに購入し、旅行へと出かけています。
旅行ファンであれば知らない人はいないほど有名な【青春きっぷ】の売り上げ増加を後押しする、
クリエイティブアイデアを創出していきます。
まずはクリエイティブの方向性について検討します。
それには大きく2つの種類があり、
1つ目は、従来のターゲット(旅行ファン・学生など)の購買率・購買数を高めるクリエイティブ
2つ目は、新しいターゲットを獲得し、購買数を高めるクリエイティブです。
今回は2つ目の、新しいターゲットを獲得し、購買数を高めるクリエイティブを軸に検討を進めます。
なぜなら、従来のターゲットの購買率・購買数を高めるのは、広告クリエイティブではひっくりかえすことが難しい障壁があるからです。
例えば【青春きっぷ】は新幹線や特急等には乗ることができず、遠くへ行こうと思う場合には時間がかかりすぎてしまいます。
感情を揺さぶり興味関心を引くことはできても時間的な制約があり利用することができない、というパターンが多くあるのです。
新しい層を取り込んでいこうとする場合、既存ユーザーに近い属性を狙うのが最も効果的です。
そこで、既存のユーザーの【青春きっぷ】を使う目的から、新しいターゲットになりえる人物像を考えます。
これまでの美しい駅や電車の写真を利用した広告ポスターは、
上記の表の2つ目、美しい景色が好きな人をターゲットにしたものでした。
そこで今回は、1つ目の「お金のかからない趣味が欲しい人」、もしくは3つ目の「現実逃避をしたい、逃げ出してしまいそうな人」のどちらかを、
ターゲットして検討します。
青春きっぷの一番の強みは、その安さです。
一日2000円で、日本全国のどこにでも行けます。
その安さを前面に押し出したポスターを制作すれば、一定数の「お金のかからない趣味が欲しい人」を購買へとつなげることは可能でしょう。
しかし、将来的にこのサービスを好きになってくれるか、という観点では、あまり確度が高くないように思えます。
一方で、「現実逃避をしたい、逃げ出してしまいそうな人」をターゲットにするのはどうでしょうか。
近年では鬱などの気分障害を抱えている人が年々増加しているのに加え、
景気の悪化や世界情勢の不安なども重なり、そのような人の数は大きく膨れ上がっています。
そのような人に対し、ふらりと遠くに出かけられる【青春きっぷ】は1つのソリューションになりえます。
そして、いつか元気になってからも、趣味のひとつとして継続してリ評してくれる可能性も高いように思えます。
以上により、「現実逃避をしたい、逃げ出してしまいそうな人」をターゲットにする方針に決定しました。
そこで、彼らをターゲットにイラストレーションを制作する上で、最も適しているシチュエーションを検討することにしました。
クライアントの要望である、美しい景色と繊細なコピーを用いる従来の広告方針は大きく変えたくないということ、
冬季『青春きっぷ』なので雪景色がきれいな舞台が良いことの二つを踏まえ、検討を進めたところ、
川端康成「雪国」が思い当たりました。
「雪国」は、都会に生活を持つ島村という男が、雪国という非日常の世界に訪れた時の出来事を描いている作品です。
冒頭の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」という一文はあまりにも有名です。
これを引用することによって、【青春きっぷ】を使うことで、ふらりと現実逃避で旅に出ると表現ができると考えました。
これらのアイデアをもとに、クリエイティブを制作する方針を決定しました。
—クリエイティブの制作—
<コピー>
「雪国」の冒頭の一文を引用して制作します。
案①:国境の長いトンネルを抜けると"ここではないどこか"があった。
案②:国境の長いトンネルを抜けると非日常だった。
案③:国境の長いトンネルを抜けて雪国まで来た。
など
これらのアイデアの中から、案①「国境の長いトンネルを抜けると"ここではないどこか"があった。」を採用することにしました。
引用として一目で伝わり、かつターゲットの「ここではないどこかに行きたい」という心情をダイレクトに描いており、
最も刺さると考えられたからです。
<イラストレーション>
「雪国」の冒頭の一文の舞台となっている、新潟県の駅を描くことにしました。
ターゲットが何から逃げ出したいのかを想像したときに、仕事が最初に想定されるかと思います。
そこで、朝職場とは反対の電車に乗り、ふらりと旅に出てしまったというシチュエーションを設定しました。
また、最近のポジティブな現実逃避として、聖地巡礼が盛んにおこなわれています。
好きな作品の舞台に出かけ、その作品世界に浸るという趣味です。
この広告をネガティブな広告にしないように、そのような「雪国」の聖地巡礼をしているキャラクターも描くことにしました。

初期のラフイラストがこちらです。
手前の男性を仕事から逃げてきたキャラクター、
奥の女性を聖地巡礼で訪れたキャラクターとしています。
清書をするにあたり、大きく2点修正することにしました。
。
1つ目は、空の雲を取り除くということです。
この広告では、【青春きっぷ】を使って旅に出ることで、
気分を晴らすことができると表現することを目指しています。
そのため、訪れた先であるこの駅の空には雲がない方が良いと判断しました。
2つ目は男性キャラクターのコートの色です。
仕事をしている男性が白いコートを着ている場面は滅多にないと感じたため、
黒色のスーツに変更をしました。
ラフをもとに清書をしたイラストレーションと、コピーや商品情報を落とし込んで広告ポスターにしたものがこちらです。


この新しいターゲット層を設定し制作した広告で、【青春きっぷ】の売り上げ増加に貢献しました。